年金受給者に選挙権は存在するのか?

社会というものはルールが無いと成立しない。ルールはその社会が存続するのに都合の
良い様に決められる。社会の構造が変化すると当然ながらルールも変更されていく。
ルールが先にあり、それに合わせて社会の構造を作るのではない。社会の構造が先にあ
り、その社会が存続できるように適正なルールを作るのである。

現行憲法では15条で全ての成人に選挙権があるとされている。現在は18才以上である。
この法思想が確立された時点では大半の成人は何某かの税金を支払っていた。少なくと
も他人の扶助で生活していた人は殆どいなかった。農業や初期段階の工業・商業が中心
の社会では高齢者と言えども、その多くは死の直前まで何がしかの生産業務に携わって
いた。専業主婦も勤労者の生活を支えているのだから、社会の生産に参加している事に
は変わりが無い。彼等も戸主の納税に参加していたのである。この様な社会構造である
なら、全成人が選挙権を持つ事に特段の祖語は生じない。

国は国民から徴収した税金で運営されている。金が無ければ何一つ仕事は出来ない。
政治とは詰まる所、国民から集めた税金をどの様に使うかと言う選択の問題である。
だから憲法納税の義務を定めている。納税は社会の成員と認める必要条件であろう。
本来なら、国民は平等の権利と義務を有している以上は税負担も平等であるべきだが、
高額所得者は社会のインフラの恩恵をより多く受けているので税の負担も大きくなる。
税の負担額の大小で投票権に大小が生じなくても問題は無い。

だが現在では税負担をしないどころか、逆に「社会から扶助を受ける成人」と言う現行
法が想定していなかった人々が大量に発生してしまった。税金を支払っていないのに、
その使い方の議論に参加する権利はあるのであろうか? 極めて問題である。
現行の法思想では有りとしているのであろうが、それは一学説に過ぎない。ある法思想
ではその社会システムに齟齬が生じるなら、それは再考しなければいけない。
(但し、税金を支払う事は参政権の必要条件だが、それは決して十分条件では無い)

現行の年金は支払った分以上に、税金で補填されて支払われている。国民年金に於いて
は、70才の人では40年間の支払総額は200万円程度であり、物価及び金利を考慮しても
400万円程度である。然るに受け取る金額は年間67万円である。僅か6年で元が取れる。
それ以降は現役世代からの扶助になる。彼らは社会の扶助で生きているのである。

近年は18才以上を成人としているが、彼等の選挙権も疑わしい。社会は税金を支払う自
立した人達で運営されており、未就労者である学生の選挙権も再考する必要があろう。
税金の使い方を決める場に、それを支払っていない人が参加するのは道理に合わない。
国民の権利と義務を明確にして、現行法の選挙権の範囲を再考する必要があろう。
その場合には勿論、被扶助者からも徴収する消費税などは廃止しなければならない。

受け取った年金以上に税金を支払っている人はこの限りではない。受取額より支払額の
方が多ければそれが納税額になる。当然選挙権があるものとされる。
また被選挙権はこの論と関係ない。選挙で選ばれる事には特段の疑念は浮かばない。

子供を除いた全国民が選挙権を持つことが民主主義だと教え込まれた人達には抵抗感が
あると思うが、権利と義務は不可分のものである。義務を果たさない者に権利は無い。
この事は現行の民主主義の概念に特段の変更を要するもので無いと考える。

blog5